Tokyo Art Report

東京、ときどき近郊でのアート鑑賞レポート

横尾忠則 原郷の森 Yokoo Tadanori Forest in Soul

2021年にも、東京で横尾忠則氏の大規模な個展が開催されていた。

彼の作品をじっくり観たのは、その時が初めて。とにかく、一つ一つの作品のインパクトが強すぎて、その上、展示作品数も多かったので、たちまち消化不良に陥ってしまった。正直、しばらくは観なくても良いかな、と思ったぐらい。

でも、やはり横尾氏の出身地、兵庫県に来たからには、彼の名を冠した美術館に行かないわけにはいかない。そう思い、「横尾忠則現代美術館」へ。

東京で観たときよりは、ぐっと作品数は少なかったものの、案の定、心して行かないとエネルギーを吸い取られそうな気がする。

《ミケランジェロと北斎の因果関係》

《画家の生活(マン・レイとキキの肖像)》

《(未完成)》

美術館最上階から山側を望むと、眼下には元関学のチャペルだった神戸文学館が。後方には、横尾夫妻が新婚時代を過ごした、青谷の街も見える。

kobecco.hpg.co.jp

鑑賞後は、美術館併設の「ぱんだかふぇ」にてひと休み。

店名の由来は、恐らく向かいの神戸市立王子動物園。こちらでは、東京の上野動物園、和歌山のアドベンチャーワールドと同様、パンダに会うことができる。残念ながら、パンダのタンタンは病気療養中とのことだったので、動物園に行くのは控えたけれども。

www.kobe-ojizoo.jp

カフェでは、美術館の半券チケット割り引きあり。お願いすれば、横尾氏デザインの器で提供してくれる。

ytmoca.jp

兵庫県立美術館 HYOGO PREFECTURAL MUSEUM OF ART

神戸に住んでいた頃、父が何度か「小磯良平」の名前を口にしていた記憶がある。父の好きな画家だったのか、神戸出身の画家だったからか、たまたまその時、何かの展覧会をやっていたからか。今や聞く術はないけれども。

何度も耳にしていたせいで、果たして私は、当時彼の作品を観たのか観なかったのかさえわからない。家族でバレリーナの作品を観たような気もするし、画集や絵葉書で観ただけのような気もする。

だから、神戸旅行を決めたとき、小磯良平の作品は絶対観ようと思っていた。

で、向かったのは「兵庫県立美術館」。こちらには「小磯良平記念室」なるものが存在するらしい。

美術館に到着して驚いた。かなり大きい。何でも、西日本最大規模とのこと。

先に企画展を鑑賞し、ついに観たかった作品とご対面。

《斉唱》

見覚えのあるこの制服は......やはり、松蔭の女学生。今も指定カバンのようになっているファミリアの補助バッグ、当時はまだ無かったらしい。

安藤建築も堪能。

ランチは、屋外デッキで潮風に吹かれながら、ホテルの朝食時に食べきれなかったパンを。

ちなみに、ホテルの様子は、こちらから

ikutan.hatenablog.com

さて、次の目的地へ。

神戸といえば、この表示。方向音痴には嬉しい。

www.artm.pref.hyogo.jp

神戸北野ホテル KOBE KITANO HOTEL

人に話すと、まだ早いと笑われてしまうけれども、今年に入ってから自分の人生を逆算して考えるようになった。

遺伝で考えると自分の寿命は☓☓歳くらい。健康寿命は、そこからマイナス10歳くらい。そうすると、自由に動き回れるのは、あと☓☓年くらい......

あと☓☓年!!まだまだやりたいことはたくさんある。今のうちに行きたいところに行って、会いたい人に会って、食べたいものを食べて......

そして、今回この3つを同時に叶える場所、それがティーンエイジを過ごした神戸だった。

お宿は、「世界一の朝食」で有名な神戸北野ホテルをチョイス。

こちらは、1992年の開業以来初の大規模改修を行い、この4月にリニューアルオープンしたばかり。

朝食はウワサ通り素晴らしかった。まさに、「五感に訴えかける」料理。

でも、前日に同ホテルでいただいたディナーが想像以上に素晴らしく!朝食に輪をかけて「五感に訴えかける」料理の数々。朝食は有名だけれども、こちらももっと広く知ってほしい。

デザートの「砂漠のバラ」。

少し残念に思ったことを一つ。このお店に限ったことではないのだけれども、最近、料理をサーブする側が、料理の名前や食材を伝えることに精一杯で、顧客と会話を楽しむ余裕がないと感じる。料理を運んでくるのが、たいてい若者だということも関係しているのかもしれない。

今回も、「兵庫県産の☓☓、明石の海で採れた☓☓......」と、指折り数えながら唱えられ(指は隠しているけれども、こちらにはバレバレ)、全部言い終わったあとには、「ふぅーーー、全部言えた!!」と心の声まで聞こえてきそう。唱えている最中は、記憶が飛んでしまうかも?とこちらも口を挟めず、またこの調子だと、何か聞いても満足な答えは得られないのでは?とも思い、「へー」とか「ふーん」とか相槌は打つものの、一方的に聞いているだけに留まる。

これだったら、紙に書かれた献立を置いておいてもらったほうが良い気もする……いやいや、そんな事は言わずに、彼らの成長を見込んで、温かい気持ちで聞いてあげたほうが良いのかな……

最後に、今回一番目を奪われた内装を。クジャクが描かれているような、エレベータの階数表示。

www.kobe-kitanohotel.co.jp

『ファッション・フリーク・ショー』 FASHION FREAK SHOW

信頼するファッション・ブロガーさんオススメのミュージカル『ファッション・フリーク・ショー』を観に行ってきた。

デザイナー、ジャンポール・ゴルチエの半生を描いたランウェイ・ミュージカル。

ゴルチエの名前は知っているけれども、どんなデザイナーなのかよく知らない。でも、直感的に、これは行かねばと思った。

で、小学生のような感想になってしまうけれども、とにかく楽しかった!

周りを気にすることなく、自分らしく好きなことを追求していいんだという安心感と、前向きな未来を感じさせてくれた。

音楽も良い。さほど洋楽に詳しくない私でも知っているナンバーのオンパレード。その曲にあわせて、実際にパリコレを飾ったという200着以上がお目見えする。マドンナが着用したことで知られる「コーンブラ」も登場。


www.youtube.com

ファッション、音楽、ダンスとも大満足であったが、残念ながら空席が目立った。プロモーション不足? 私が鑑賞した2階A席の前方、4列あったS席には、誰も座っていなかった。国によっては、空いているならとA席のチケットでS席に座りそうなものだけど、そこは日本人。みな、最後まで指定のA席で鑑賞していて、なんだか微笑ましい。というか、この先日本人も、もう少し図々しくなるべきか。

劇場ロビーには、背景色を違えたポスターがところどころに飾ってあり、私は黄色がお気に入り。

好きなものを素直に好きだと言えることって、とても幸せなことなのかもしれない。

fashionfreakshow.jp

2022年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作 優秀作品展 Selected Works from Musashino Art University

藝大の卒展に行きたいと思っていたけれども、予約制で気づいた頃には満員御礼。では、ムサビはどうだと思ったら、こちらは予約不要。で、やはりムサビもすごい。

心惹かれた作品は数多くあったけれども、そのうち3点をご紹介。

まずは、平田円理氏の『yadorigi.st』。

明石海峡大橋の、新幹線が通るはずだった空間に一つの街をつくったもの。例として、イタリアはフィレンツェのヴェッキオ橋が挙げられていた。有名な橋だし、私も実際に行ったことがあるのでイメージしやすい。しかし、日本でもつくってみたらどうだろう、なんて発想は思い浮かばなかった。

次に、下河結衣氏の『FLATFORM-無人駅で車椅子ユーザーをサポートする搬送車-』。確かに、無人駅で車椅子ユーザーを見かけたことがない。今まで、その分行動範囲も限られていたことであろう。今後、ますます無人駅が増えると予想される中で、ぜひとも製品化してほしい作品である。

最後に、石坂明日香氏の『Tokyo Constellation』。こちらは、現在都内に7600件超あるコンビニを星に見立てた星図だ。都内だけでも無数にあり、深夜に煌々と光る店舗は、宇宙からみたら、まさに星のようなものかもしれない。

その他、私が記憶しているだけでも、親を亡くしたことが作品に投影されているものが3点あった。こんなに若くして肉親との別れを経験しているのか......と思うと、それだけで胸が痛い。彼らは、作品を残すことで気持ちの整理を図っているのか。

今回、残念だったのは、作品数が多すぎて(約100点とのことだが)、最後の方はあまり頭に入ってこなかったこと。通常の美術館のように、室内に椅子がなかったことも大きいかも。いや、もしかしたら、個々の作品が放つエネルギーが強すぎて、それで疲れてしまったのかもしれない。

mauml.musabi.ac.jp

ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜 THE KAHALA HOTEL & RESORT YOKOHAMA

外出制限のあったコロナ禍で、目覚めてしまったこと。それは、関東近郊の気になるホテルに宿泊すること。

今回の行き先は、ハワイ・ホノルルにルーツがある「ザ・カハラ・ホテル&リゾート横浜」。

ちなみに、前回のホテルレポートはこちらから

ikutan.hatenablog.com

ガラス窓のない重厚な扉から一歩中に入ると......甘い香りにハワイアンミュージック。アロハシャツを着たスタッフの明るい笑顔に迎えられ、到着早々、ああ、来て良かったと安堵感を覚えた。

早速最上階のロビーに案内され、チェックイン手続きへ。

予約していたルームタイプは、「グランド ハーバービュー」。

海か山かと問われたら、断然山派の私も、横浜と神戸の海は別格。落ち着く。そんな横浜の海を眺められるなら、と迷わずハーバービューの部屋を予約していたけど、チェックインの際、「少し追加料金がかかってしまいますが......今でしたら海を見渡せる角部屋をご用意できます。いかがでしょうか」とのご提案が。ええ!角部屋!!それは絶対良いに決まっている!!!でも、予算との兼ね合いが......

タブレットで部屋の様子を見せていただき、いや、間違えなく良いのだけど、一人泊には広すぎるし、お値段的にも贅沢過ぎない?......と決めかねていたところ、「実際にご覧になりますか?」と。

で、案内されたのがこのお部屋。この眺め。

浴室からも海が望める。

いやいやいやいや、断る理由なんてありません。このあと、本来宿泊予定だったお部屋に案内していただいたけれども、こちらを先に見てしまったら......

これは、マンション売却時の手法と同じかも。先に良い方を見せちゃう。

ということで、結局ご提案いただいた「プレステージコーナー」に宿泊することに。

室内のテーブルには、ウエルカムフルーツならぬ、ウエルカムマカダミアナッツ。

すぐ食べるのはもったいないと、自宅に帰って食したところ、これが美味しい!ナッツが丸々ゴロリと入っている。ブティック(お土産ショップ)でも販売していたけれども、味わう前だったので、少しお高いと買わずじまいだった。

アメニティも充実。ザ・カハラのロゴ入りオリジナルシャンプーは、同じくブティックでも販売。ネスプレッソマシンに、大好きなTWGのティーバッグも。しかし、これらのアメニティ、宿泊前に丁寧に説明を受けたつもりが、窓からの景色にやられて、ほとんど楽しめず。というか存在を忘れており、家に帰ってから、ああ、そういえば!と思い出す始末。

さて、館内でのお楽しみはスパ。スパには、ジムと温水プールも併設。今回はひたすらのんびりしたかったので、大浴場のみ利用。滞在中3回利用したけれども、お子様連れや、お友だちと複数人で来ている女性が多かった印象。

翌朝は、客室から日の出も堪能。東が海側なので、初日の出を拝みに宿泊される方も多いのだとか。

そうそう、客室にヨガマットも用意されており、ぜひ朝日を浴びながらヨガを!と説明を受けていたのに、これまた忘れていた。

朝食は、ブッフェ形式のハワイアンブレックファースト。朝一での利用も影響してか、こちらは圧倒的に、小さいお子様を含めた家族連れ多し。注文と同時に作ってくれるオムレツが美味。

16時にチェックインし、翌12時直前にチェッアウト。

次回は、ここから初日の出を眺めてみたい、と夢膨らむ。

thekahala.jp

特別企画展 中国巡回展帰国記念「崑崙(こんろん)の西から」 Hirayama Ikuo Silk Road Museum

八ヶ岳を訪れるたびに気になっていた「平山郁夫シルクロード美術館」。今回、ようやく足を踏み入れることができた。

文化勲章も受賞した日本画家、平山郁夫の名を冠した美術館は他にもある。しかし、こちらの美術館は、平山氏の絵画作品だけでなく、夫妻が40年にわたって収集してきたシルクロードの美術品も収蔵、展示しているとのこと。

そのことを知らずに展示室に入ったので、いきなり始まった仏像群には驚いた。

平山氏のアトリエ再現コーナーも。左手前の作品は、遺作(未完)となった《病室の窓辺の花》。

最後の展示室には、晩年に描かれた「大シルクロード・シリーズ」。

まさに平山作品の集大成ともいえるのではないか。圧巻だった。

www.silkroad-museum.jp