Tokyo Art Report

東京、ときどき近郊でのアート鑑賞レポート

2022年度 武蔵野美術大学 卒業・修了制作 優秀作品展 Selected Works from Musashino Art University

藝大の卒展に行きたいと思っていたけれども、予約制で気づいた頃には満員御礼。では、ムサビはどうだと思ったら、こちらは予約不要。で、やはりムサビもすごい。

心惹かれた作品は数多くあったけれども、そのうち3点をご紹介。

まずは、平田円理氏の『yadorigi.st』。

明石海峡大橋の、新幹線が通るはずだった空間に一つの街をつくったもの。例として、イタリアはフィレンツェのヴェッキオ橋が挙げられていた。有名な橋だし、私も実際に行ったことがあるのでイメージしやすい。しかし、日本でもつくってみたらどうだろう、なんて発想は思い浮かばなかった。

次に、下河結衣氏の『FLATFORM-無人駅で車椅子ユーザーをサポートする搬送車-』。確かに、無人駅で車椅子ユーザーを見かけたことがない。今まで、その分行動範囲も限られていたことであろう。今後、ますます無人駅が増えると予想される中で、ぜひとも製品化してほしい作品である。

最後に、石坂明日香氏の『Tokyo Constellation』。こちらは、現在都内に7600件超あるコンビニを星に見立てた星図だ。都内だけでも無数にあり、深夜に煌々と光る店舗は、宇宙からみたら、まさに星のようなものかもしれない。

その他、私が記憶しているだけでも、親を亡くしたことが作品に投影されているものが3点あった。こんなに若くして肉親との別れを経験しているのか......と思うと、それだけで胸が痛い。彼らは、作品を残すことで気持ちの整理を図っているのか。

今回、残念だったのは、作品数が多すぎて(約100点とのことだが)、最後の方はあまり頭に入ってこなかったこと。通常の美術館のように、室内に椅子がなかったことも大きいかも。いや、もしかしたら、個々の作品が放つエネルギーが強すぎて、それで疲れてしまったのかもしれない。

mauml.musabi.ac.jp