Tokyo Art Report

東京、ときどき近郊でのアート鑑賞レポート

第27回岡本太郎現代芸術賞展(TARO賞) The 27th Exhibition of the Taro Okamoto Award for Contemporary Art

一気に初夏の陽気になった週末。小田急線沿線で所用を済ませ、このまままっすぐ帰るのはもったいないと立ち寄ったのが「川崎市岡本太郎美術館」。

これまで幾度となく訪れてきたが、運良く「TARO賞」展開催中。こちらの賞は「太郎氏の精神を継承し、自由な視点と発想で現代社会に鋭いメッセージを突きつける作家を顕彰すべく」設立されたもの。

会場に入った途端、目を引いたのが村上力氏の《學校》。

実は、2年前の「TARO賞」でも彼の作品《異形の森》に感銘し、偶然会場に居合わせたご本人とお話した様子をブログに書いたが、今回もまたお話することができた。

ともに、幼少期を広島で過ごしたという原体験を持っていたことが、この作品に強く惹かれた理由かも。

ikutan.hatenablog.com

作品には、太郎氏とドラゴンの姿も。こちらのドラゴンは、今年の年賀状用に作成したものなのだとか。

その他、月光社の《MUSAKARI》も良い。ウクライナ兵と東北地方の神事の共通項が興味深い。

また、村尾かずこ氏の《サザエハウス-Village-》は温かい。初めて見るのに同じ形状の「かまくら」よりもずっと親近感がわく。子どもの頃、サザエの貝殻が食後も捨てられずに、何かに再利用されているのを見てきたからか。そういえば私も、お正月のあわびの貝殻も、ひな祭りの時のはまぐりの貝殻も、捨てずにとっている。

内側から見ても美しい。

www.taromuseum.jp

キース・ヘリング展 アートをストリートへ KEITH HARING Art to the Streets

キース・ヘリングは好きだけれども、今回の展覧会には行かないつもりだった。

というのも、今回、特別協力として名前が出ている中村キース・ヘリング美術館には、これまで何回か訪れたことがあるので、同じ作品を観ることになるかなと。

ikutan.hatenablog.com

よって、誘われるまま行ったのだけれども、前言撤回!行って良かった。まだ観たことのなかった作品あり、好きな作品との再会あり、森アーツセンターギャラリーならではの展示方法あり。

そんな、観たことのなかった作品の一つがこちら。子ども向けだけど、大人も夢中になってしまう。展覧会オリジナルグッズとして、同デザインのトートバッグとマグカップも販売中。

《赤と青の物語》

こちらは、6章「現在から未来へ」の作品群。過去にも観た作品だけれども、宙に浮かんでいるような展示方法が斬新。

《ブループリント・ドローイング》

一見、ヘリングっぽくない。パブロ・ピカソから影響を受けた作品も。

《ペルシダ》

わずか31歳でこの世を去ったヘリング。活動期間も10年。なんだか、また中村キース・ヘリング美術館にも行きたくなってきた。

macg.roppongihills.com



 

『PERFECT DAYS』

幸田文の本が登場したのが嬉しい。つい2ヶ月前まで実家に彼女の作品群があった。やむを得ず、急遽多くの蔵書とともに手放す羽目になったけれども。

劇中、古本屋の店主も語っていた。もっと彼女の作品は世に知られるべきだと。その通り。今でいう名エッセイスト。父、露伴との生活ぶりや日々の暮らしのあれやこれやが面白い。役所広司扮する平山が、畳の部屋を掃除するシーンは、彼女のエッセイから仕入れた生活の知恵なのではないかと思い出す。

それなのに、今や「こうだあや」と正確に読める人も多くないのでは。居酒屋のママはスラスラと読み上げていたけれども。私なら、初見では迷わず「ふみ」と読んでしまいそう。

www.perfectdays-movie.jp

 

パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展—美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ The Cubist Revolution An Exhibition from the Collection of the Centre Pompidou, Paris 

1月2日の美術館は穴場、と長年信じていたけれども、国立西洋美術館に至ってはそんなことはなかった。美術館どころか、上野の街自体が人であふれかえっていた。いつも通りに。

今回のお目当ては、ポンピドゥーセンターと国立西洋美術館の共同企画による「キュビスム展」。

印象に残った作品は、キュビスムの大流行を生み出した一人である、パブロ・ピカソの《肘掛け椅子に座る女性》。

それと、マルク・シャガールの《墓地》。

シャガールといえば、パリの上空にフワフワと浮かぶ恋人たちの絵の印象が強かったけれども、こんな作品も残していたとは。

それ以外に、国立西洋美術館を設計したル・コルビュジエの作品群も印象深い。

音声ガイドには、通常のナビゲーターに加えて、山田五郎氏の解説も。帰宅後、そういえば最近、五郎さんのYouTube番組を見ていなかったと検索したら、当美術展についても2回にわたり解説していた。これはわかりやすい。こちらを聴きながら鑑賞するのも良し。


www.youtube.com


www.youtube.com

www.nmwa.go.jp

銀座・和光 ウインドウディスプレイ WAKO

今まで何度となく目にしてきた銀座・和光のウインドウディスプレイ。

その都度感動してきたけれども、今回のは圧倒させられた。色々すごい。こちらの白いドラゴン、なんと布製。龍頭を被っているのは雪男?それとも昨今お騒がせの熊?

何枚も写真を撮り、この後大手町で会う予定だったパートナーにも送り、食事後再び銀座に戻ってきて、今度は二人で鑑賞。運良く居合わせた作家さんともお話をすることができて感無量。

www.wako.co.jp

竹中大工道具館 TAKENAKA CAPENTRY TOOLS MUSEUM

今回、2泊3日の神戸旅行で一番印象に残った場所。それがこちらの「竹中大工道具館」。

大工道具を民族遺産として収集・保存し、後世に伝えていくことを目的に設立された、日本で唯一の博物館。

当初予定していなかった行き先だけれども、神戸っ子である友人からのご提案。やはり、地元民の口コミは最強。まだまだ生成AIは勝てないはず。

以前、東京で観た竹中工務店の展覧会も素晴らしかったので、ある程度は予想していたものの......案の定、期待を裏切らず。

www.setagayaartmuseum.or.jp

木や建築物好きにはたまらない空間。

ボランティアガイドの熱心な説明にも、「へー」の連続。

写真は、どうにか一枚におさまった大工道具一式。1943年の調査によると、本格的な建物をつくるのに必要な大工道具は、179点もあったのだとか。当時、どんなにわか作りの建物でも、72点は必要だったとのこと。

土壁を塗る前のお茶室。

当日は、木を使ったワークショップも開催されていて、参加者は熱心に自分の作品と向き合っていた。イベントページを見ると、今後も興味深いワークショップがずらり。東京でも開催してくれないかな......

https://www.dougukan.jp/

この日は朝一に件の友人と待ち合わせをし、まずは老舗珈琲店本店でモーニング。

kobe-nishimura.jp

三宮、元町散策を経て、ランチはこちらにご招待。

kantan-tei.jp

その後、竹中大工道具館へ。

今回は、まさに行きたいところに行って、会いたい人に会って、食べたいものを食べる旅。

実は、つい数日前、元同僚の訃報を知らされた。偶然にも神戸出身だった彼。今回の旅でも「元気にしているかな?」と思い出したばかりだったのに……彼に聞いて知ったフロインドリーブのクッキー、お土産に買って帰ったばかりだったのに……

改めて、人生は有限。

旅のときだけに限らず、今日、行きたいところに行って、会いたい人に会って、食べたいものを食べる。今後もこのスタイルで生きていきたい。

神戸市立博物館 コレクション展示室 Kobe City Museum

私が訪れた日、神戸市立博物館は『特別展 ジブリパークとジブリ展』を開催中で賑わっていた。

私もジブリは大好き。特別展は、もちろん鑑賞。でも、常設のコレクション展示室も見応えあり!国内の博物館・美術館のご多分に漏れず、多くの人にスルーされ、鑑賞者は数名であったけれども。

こちらの博物館は、あの、教科書にも載っていた《聖フランシスコ・ザビエル像》を所蔵している。ザビエル、よく見るとまつ毛が異様にクルリンとしていて、まつ毛パーマ、ビューラーいらず。

そういえば、一昨年訪れた愛知の明治村では、「聖ザビエル天主堂」が展示されていた。彼の来日を記念して、京都に建てられたというカトリック教会堂。

ikutan.hatenablog.com

コレクション展示室では、県内で出土した銅鐸も必見。後から国宝だったと知ったが、銅鐸に描かれた絵画がなんとも言えずかわいらしい。

この日は、午前:兵庫県立美術館、午後:横尾忠則現代美術館、夕方:神戸市立博物館とミュージアムを三軒はしご。

ikutan.hatenablog.com

ikutan.hatenablog.com

観終わったあとは、すでに朝からの歩数が25000歩を超えていたので、とても外食する余力は残っておらず、夕飯は大丸の地下で購入。

やはり、神戸といえば洋食。

今宵のホテルは、旧新神戸オリエンタルホテル。私にとっては、こちらのホテル名の方がなじみ深い。

最後に、博物館のウェブサイトにこんなページを見つけた。阪神・淡路大震災直後の記録と写真画像。

www.kobecitymuseum.jp

1995年は、誰もが瞬時に写真や動画を撮れる時代ではなかった。震災を経験した友人は、いまでも約30年前の当時を思い出すと辛いと言う。当事者にとって、カメラを持ち出し、写真を撮るのも、胸の痛む作業だったに違いない。私たちは、ここでの教訓を引き継ぎ、後世に伝えていかなければならないと改めて思った。

www.kobecitymuseum.jp