Tokyo Art Report

東京、ときどき近郊でのアート鑑賞レポート

SMBC meets Contemporary Art〜Come take a look!

メインバンクである三井住友銀行が、現代アートの展覧会をしているというので、早速お昼休みに行ってきました。

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ここ何年か、ビジネスとアートを結びつけた本をよく目にするようになったけれども、日本の銀行とアート。正直あまりピンと来ない。

今回展示してあるのは、ミスミグループ本社創業者の田口弘氏のコレクションから厳選した18点。どうやらSMBCグループの新たな取り組みらしく、アートを通して、社会全体の創造性や先進性を高めることに貢献したいとのこと。場所は、大手町の三井住友銀行東館1階ロビー(アース・ガーデン)。入場無料。

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まず目に入ったのが、おなじみキース・ヘリングの《無題5月31日》。このジッとしていない感じ、好きだな。どこかしらつながっているのも良い。しかも、この時期にふさわしいハート型。

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今回は、私にとって全く知らないアーティストの作品も多く、その中でも印象に残ったのが、次の3点。

まずは、アリシア・クワデの《Be-Hide(半円形)》。

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ものすごく不思議な作品。石と石を鏡で区切っているだけなのに、全体が繋がって見える。そして、写真で見ると余計そう感じるのだけれども、どれが本物の石で、どれが鏡に映っている石なのか区別がつかない。あっちから見たり、こっちから見たりしながら、結局なぜこうなるのか答えは出せぬまま。

お次は、コラクリット・アルナーノンチャイの《無題(歴史を描く)》。

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キャンバス下方には、燃やされたデニムが...目にした瞬間から、おどろおどろしいものを感じていたけれども、デニムはアメリカのグローバリゼーションの象徴として用いられているのだとか。資本主義社会に対する宣戦布告?

そして、最後はハルーン・グン=サリの《センゼニナ(われわれが何をしたのか)》。

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首から下しかないので表情はわからない、でも怒りを感じる。全身から。こちらは、南アフリカにある鉱山で、実際に起った事件がもとになっているとのこと。鉱山労働者34人が待遇改善を求めて1週間のストライキの後、警察の発砲により射殺された...この作品は、その瞬間に座り込んでいた17人の姿とのこと(今回はスペースの関係で一部の展示)。ちなみにタイトルになっている「センゼニナ」とは、反アパルトヘイトへの闘争歌からとられたとのこと。

以上、銀行での展覧会とのことで、誰からも文句の出ない、優等生的な作品が展示されているのかと思いきや、意外にも問題を投げかける、考えさせられるような作品もあったので驚いた。今回は「SMBC ART HQ」の第1弾。次回も期待したい。

www.smfg.co.jp

また、作品を提供していた田口氏のコレクションも気になり、HPを見たところ、現在550点の現代アートを収集しているとのこと。収集の契機となったキース・ヘリングの作品は、冒頭の作品以外にもう1点。また、当初から人々にみてもらうことが前提の収集で、敢えて一箇所に留まる会場を設けず、全国の美術館等からの要請に応じて展覧会を行っているとのこと。作品同様、コンセプトも素晴らしい。

taguchiartcollection.jp