Tokyo Art Report

東京、ときどき近郊でのアート鑑賞レポート

『ハウス・オブ・グッチ』 HOUSE OF GUCCI

予告編で観たいとは思っていたけれども、先日シャネルやディオールのハイブランドファッションを見たことにより、是が非でも観なければ、と行ってきたのが映画『ハウス・オブ・グッチ』。

ちなみに、先日見たハイブランドファッションとは...こちら

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オミクロン株が連日猛威を振るっているので、混雑を避けてレイトショーにしたところ、100席ほどの会場に5組ほどしかいなかったけれども、

もう、レディー・ガガがすごい!

2018年上映の『アリー/スター誕生』で、アーティストとしての活躍しか知らなかったガガの演技力に驚いたものの、さらにパワーアップしていた!もはや、主役のパトリツィアにしか見えない。

持ち前の才覚と上昇志向で、女性にはあまり免疫がないと思しき御曹司を、手練手管でその気にさせ、まんまとグッチ家の一員となり、最終的には復讐の鬼と化すところまで。ガガは、今回の演技で三種類の動物を参考にしたと語っているけれども、三種どころか、まさに七変化。圧巻のラストシーンは、ふてぶてしいガマガエルにしか見えなかった。


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話は1978年から始まる。

当時、グッチにとって、日本も無縁ではない。むしろ主要顧客として描かれている。日本人が、グッチなどのブランド物を買い漁っていると言われていたのは、1980年代後半のバブル期の話かと思っていたけれども、すでにその前から、アル・パチーノ演じるアルド・グッチにも「日本人は、物静かで従順でお金持ち」と言わしめているほど。確かに、我が実家にもGGの刻印の入ったバッグがあった。恐らく、今ではオールドグッチと呼ばれているもの。父の仕事関係の方からいただいたものだったらしいが、日本において、庶民でもハイブランドを持ち始めた、そんな時代だったのだろう。

また劇中、アルド・グッチは御殿場にモールを作ろう、なんて提案もしていた。現在、御殿場にあるモールといえば、2000年開業の「御殿場プレミアム・アウトレット」が思い浮かぶが、グッチもかなりの敷地を占めていて、いつ行っても混んでいるイメージがある。計画していたモールとは、果たして、このアウトレットのことを指しているのか、それとも架空のお話なのか...

さて、1990年代までを描いたこの作品、グッチ家の豪邸や調度品、登場人物が着こなすグッチコレクション、車に疎い私でさえも「これって、もしかして...ランボルギーニ?」とわかる高級車の数々...それらを観ているだけでも十分楽しい。不思議なことに、自転車やスクーターでさえも、イタリアの街並みが背景だと、オシャレにみえてしまう。

それにしても、ガガ自身、裕福な実業家の娘で、お嬢様学校出身だとは聞いていたけれども、それとは真逆の野心むき出し、成り上がりのパトリツィアを見事に演じきっている。印象に残っているシーンの一つに、スキー場で夫の旧友たちを前に、延々とパリ旅行の自慢話をするところがある。昔からよく知っていると言わんばかりの店の名前はうろ覚えだし、宿泊したホテルの階数もウソ。旧友たちのしらじらした空気の中でも話は止まらない。でも、若くして手に入れた幸運の座。まるで自分の手柄のように自慢したくなる気持ち...自分ももし同じ立場だったら...わからなくもないかも。house-of-gucci.jp

ところで、実家にあるオールドグッチのバッグ。実はまだ健在だが、古いものだし、使う当てもないので処分しようかと思っていた。しかし、グッチ家のお家騒動を知り、また、日本が「お金持ち」と言われ元気だったころの製品と知った今、簡単には手放せないと思えてきた。

なんでも、先日読んだ記事によると、現在の日本の購買力は1970年代と同程度なのだとか。この30年、賃金は上がるどころか下がってきているし、その上ここに来ての円安。ハイブランドはおろか、輸入に頼ってきたものは、どんどん庶民の手の届かないものになっていく...

さて、どうしよう...

バッグはお直しに出して、再び命を吹き込もうか。

そんな気持ちにさせた『ハウス・オブ・グッチ』。やはりすごい映画だと思う。