Tokyo Art Report

東京、ときどき近郊でのアート鑑賞レポート

アール・ヌーヴォーの華 アルフォンス・ミュシャ展 〜ミュシャとアール・ヌーヴォーの巨匠たち〜 Alfons Mucha Exhibition

小田急百貨店で開催中のミュシャ展に行ってきました。

そう、今回の会場は、いつもとは趣が違い百貨店の催物場。通常は、物産展や婦人服バーゲンなどで使われる、あの催物場。当然ながら、作品を展示するには明るすぎる照明、作品の良さがあまり引き立たない壁紙、そして天井からの照明を反射させるかのようなピカピカの白い床...致し方ないとはいえ、おおよそ美術館での計算され尽くした展示スタイルとは違う。それでも、普段は美術館に行かない、行けない人たちが、お買い物帰りに立ち寄ってくれたらいいなと思う。

実は、このミュシャ展、3年前にも同じく年末年始に開催されている。1週間程度の短い期間だったけれども、思いの外会場は混んでいて、コレクターによるギャラリートークの際も想定以上の人が詰めかけ大混雑となり、百貨店側も困惑していたような記憶が。そんな反響を受けてか、今回は、前回よりも作品数が増え、開催期間も2週間程度に延長。

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さて、ミュシャといえば、真っ先に思い浮かぶのは、ギリシア神話に出てくるニンフ(精霊)を描いたような作品の数々。

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もちろんそれらの作品も素晴らしい。でも、今回印象に残ったのは、東京では初めての展示になるという「装飾資料集」。アール・ヌーヴォー様式の教科書とも称される図案集。デザインモチーフは植物、人物、動物、活字、家具、装飾品など多岐にわたり、どことなくウィリアム・モリスの壁紙を彷彿させるような。こんな壁紙の家に住めたら...と妄想しきり。

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また、フランスやアメリカでの活躍後、祖国チェコに戻った後の作品も印象深い。チェコ時代の作品といえば、2017年に国立新美術館でも展示された《スラブ叙事詩》が有名だけれども、大作と言われる作品以外も、一つ一つが祖国愛に溢れている。

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左は、スラブ叙事詩展のポスター。右は、チェコスロバキア独立10周年を祝うポスター。

ミュシャは、新生チェコスロバキア政府から、切手、紙幣、国章、警察官の制服などのデザインも任され、それらをほとんど無償で引き受けていたとか。自分の才能を、祖国のために惜しげもなく差し出す...私が提供できる才能って一体何だろう、と年の瀬に考えさせられる展覧会だった。

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