Tokyo Art Report

東京、ときどき近郊でのアート鑑賞レポート

メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 European Masterpieces from The Metropolitan Museum of Art,New York

ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いている。早くも2ヶ月が経過してしまった。その間、ブログの更新も中途半端になっていたけれども、まだ会期中のものについては、ブログを完成させて公開することに。戦争反対という思いは変わらないけれども。

 

さて、恐らくアート系雑誌やWebの「2022年観るべき展覧会」の上位に入っていると思われる「メトロポリタン美術館展」。

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今回は、事前情報をほとんど入れずに臨んだところ、会場に入ってすぐに宗教画が展示されていたので、慌てて「音声ガイド」を借りることに。西洋画は、聖書とギリシャ神話の知識があるとより楽しめると言うけれども、毎回先延ばしになっており、今回も付け焼き刃的に知識を補給。それでも回数を重ねれば、少しは血となり肉となるのではないか、と淡い期待もしつつ...

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展覧会は、サブタイトルに「西洋絵画の500年」とあるが、3章に分かれて展示。まず、目を引かれたのが、各部屋の壁紙の色。大きく分類すると、青、赤、ベージュ、グレー、水色に分かれているのだけれども、何れも日本ではあまり見かけない青であり、赤であり、ベージュであり...そして、その色のチョイスが作品の美しさを実に見事に引き立てている。また照明の明暗とも調和がとれていて、このあたりの調整の過程が非常に興味深い。

壁紙の色で思い出すのは、昨年訪れた名古屋の「ヤマザキマザック美術館」。こちらも作品が壁紙の色に違和感なく溶け込んでいた。

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さて、「第1章 信仰とルネサンス」で印象に残ったのは、エル・グレコの《羊飼いの礼拝》。遠目で、何だかすごい作品がある!絵の中心に光が射している!と思い近づいてみたら、エル・グレコの作品だった。

「第2章 絶対主義と啓蒙主義の時代」では、4点。まず、グイド・カニャッチの《クレオパトラの死》。クレオパトラの最期が、このようなものであったとはついぞ知らなかったが、しばしば絵画の題材になっていたらしい。絶世の美女と言われたクレオパトラの透き通るような肌と、毒々しいコブラの対比が目をひく。

次に、シモン・ヴーエの《ギターを弾く女性》。こちらは、ギターを弾いている姿というより、衣服のドレープに目を奪われた。波打つ姿が本物みたい。

そして、うっかり見過ごすところだったヨハネス・フェルメールの《信仰の寓意》。音声ガイドに載っていなければ、ウルトラマリンブルーをキレイな青だなと思わなければ、さほど注視して観なかったかもしれない。しかし、フェルメールが日本で騒がれだしたここ20年ほどで、こんなに「普通」扱いだったのは初めてではないだろうか。それほど、他の作品も名作ぞろいというところか。

最後に、エリザベート・ルイーズ・ヴィジェル・ブランの《ラ・シャトル伯爵夫人》。作者は、マリー・アントワネットお気に入りの女流画家とのこと。こちらの作品は、非常に物憂げに描かれているが、女流画家なだけに、女性がどのように描いてもらうのを好むのか心得ていそう。

私がよく見る山田五郎氏のYouTubeでもご紹介。


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「第3章 革命と人々のための芸術」では、さほど美術に詳しくない人でも知らない名前はないくらいの充実ぶり。その中でも、クロード・モネの《木馬に乗るジャン・モネ》(1872)と、白内障がすすんだと思われるモネが描いた《睡蓮》(1916-1919)の対比が印象に残った。

最後に、今回の展覧会で嬉しかったこと。それは、パンフレットに全作品の写真とキャプションが載っていたこと。今までみた展覧会は、紙面の都合上か、たいてい名作や初来日作品が大きく載っているばかりで、今回のように全作品が載っているのを見るのは初めて。今やネットで検索すれば何でも調べられる時代になったけれども、その検索キーワードさえ記憶から抜け落ちていることがあるので、パンフレットを毎回ファイルしている私にとっては嬉しい限り。もしかしたら、すべて名作なので、選びようがなかったのかもしれないけれども...

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