台風が関東に上陸する前に、束の間、八ヶ岳へ。
今回は時間が限られていたので、アート鑑賞は一つに絞り、過去にも数回訪れたことのある「中村キース・ヘリング美術館」へ行くことに。
キース・ヘリングのコレクションは、館長の中村和男氏が、1987年米国出張中にニューヨークのギャラリーで買い求めた、こちらの《スリー・リトグラフス(ピープル・ラダー)》から始まる。
当時、中村氏自身はキース・ヘリングの名前を知らなかったということもあり、アメリカ、ことニューヨークでは既に有名だった彼の作品の値段に戸惑ったらしい。しかし、どうしても諦めきれず、帰国前日に分割払いで作品を手に入れた、と館長インタビューで語っていた。一体いくらで購入したのか気になるところだが、その時の決断のお陰で、今こうして、私たちが日本で簡単に観ることができるのだから、本当に有り難い。散々迷ったとはいえ、作者のネームバリューではなく、作品そのものを気に入り購入した、と言う選択さえも尊敬してしまう。
その後、起業した中村氏のコレクションは増え続け、ついには2007年、キース・ヘリングの作品のみを展示する世界で唯一の美術館をオープンするまでに。現在約300点の作品と、500点以上の資料を収蔵しているとのこと。
今回は、開館15周年記念展ということで、わずか31歳でエイズにより亡くなった彼の最晩年の作品から展示されていた。その中でも印象深かったのが、こちら。
1990年、まさに亡くなる数週間前に完成した作品である。
一転、こちらは1980年代、彼が世に出るキッカケとなった、地下鉄の広告板にかけられた黒い紙に、チョークで描いたという「サブウェイ・ドローイング」。
そのほか、新所蔵の作品や、これまで観たことのなかった作品も展示されており、つい時間を忘れて見入ってしまった。
しかし、一番印象に残ったのは、こちらのポスター群。
左上から《エイズ:10代のためのガイド》、《セーフ・セックス!》、《フリー・サウスアフリカ》、《無視は恐怖、沈黙は死》、《軍備縮小のためにアートができること》、《核放棄のためのポスター》、《心ではなく武器を壊そう》...
活動期間は、わずか10年余り。その間にどれだけ多くのメッセージを発していたことか。
そういえば、以前、表参道で観たポスターも、当美術館所蔵のものであった。
鑑賞後のミュージアムショップも楽しい。ちなみに、美術館のアンケートに答えるとオリジナルポストカードのセットを、ミュージアムショップのアンケートに答えるとオリジナルステッカーをそれぞれプレゼントされた。
さて、今回の八ヶ岳での食事処については、なじみのところに。
東京にもアジア料理のお店は数多くあれども、いつもつい来てしまう「アジア屋台ごはん 五五吉食堂(ゴゴキチショクドウ)」。山梨ナンバーの車も多いので、地元でも愛されているはず。
こちらは、どんなにお腹がいっぱいになっても、最後に必ずオーダーしてしまうチェー。
翌朝は「ククーカフェ」のモーニングセット。朝の涼しさが快適過ぎて、予定よりのんびり起床、ゆっくり温泉に浸かっていたら、すっかり出遅れ、到着したときには店外にも行列が出来ていた。ハイシーズンに行く方は、オープン前後か、オープンから1.5時間後以降に行くのがおすすめ。
今回の展覧会は、今年の5月に始まり、来年2023年5月7日(日)まで。毎年、約1年かけてその年のテーマの展覧会をするというのも、一人のアーティスト専門の美術館ならではで良い。