Tokyo Art Report

東京、ときどき近郊でのアート鑑賞レポート

ヤマザキ マザック美術館 THE YAMAZAKI MAZAK MUSEUM OF ART

遅すぎる夏休みをとって、名古屋に行ってきました。

私の勤務先では、年に1回連続して5日間の休暇をとらなければならず、そうは言ってもこのコロナ禍。あまり遠方や、もみじ狩りで混雑している地域に行くのは避けたい。それに、旅行だからと言って、そんなに浮かれた気分にもなれない。ギリギリまで迷って、以前から行きたかった博物館明治村と名古屋市内の美術館巡りをすることに。ということで、今日から何回かに渡って、Tokyo Art Report ならぬ Aichi Art Report をお届けします。

名古屋に着いて、まず訪れたのが「ヤマザキマザック美術館」。常々、地方美術館の持つコレクションの中には、すごいものがあるなあと感じていたけれども、こちらも間違いなくそんな美術館の一つ。元は、工作機械メーカー、ヤマザキマザックの創立者が蒐集した作品を所蔵、公開している美術館。

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開催中の特別展は「四季折々の情景 美術館に息づく小さな自然たち」と題し、現代作家9組の陶芸やガラス作品を、美術館所蔵のアール・ヌーヴォーのガラスや家具と共に展示。現代作家の作品も、各々繊細で目をみはるものがあったけれども、いやはや所蔵作品が素晴らしすぎた。今回私は、日本ではガラス工芸家として知られているアール・ヌーヴォーの巨匠、エミール・ガレが家具制作もしていたことを、初めて知った。

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エミール・ガレ 蜻蛉のテーブル 1897年考案のモデル

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エミール・ガレ 飾り棚 1890年代

ガレ以外にも、ポール・アレクサンドル・デュマの婦人用机やダイニング・ルームに、もううっとり。

続く上階の常設展では、18世紀から20世紀までのフランス美術300年の流れがわかる所蔵品で構成されており、内装にもこのこだわり。

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床素材は、ヨーロッパの美術館と同じく無垢材を使用し、「ヒール音が気になる場合は、スリッパの用意もございます」との案内も。そういえば、以前よく通っていた都立中央図書館では、鉛筆音を響かせないために下敷きの貸出をしていたけれども……今もそうかな?何れにしろ、こういう配慮はとても日本的だと感じてしまう。所蔵品は、ロココからエコール・ド・パリまで。ロココは、私もあまり馴染みがないけれども、エコール・ド・パリまで来ると、マリー・ローランサン、ユトリロ、モディリアーニ、シャガールなどなど、知っている名前がずらり。そう、非常に珍しいルノワールの彫刻作品もあった。

今回、嬉しかったのは、特別展、常設展とも無料の音声ガイドがついていたこと。時間の限られた旅行者ゆえ、全てを聞くことはできなかったけれども、こういうサービスは有り難い。以前、母と都内の私立美術館に行ったときも、やはり無料の音声ガイドがついていて、高齢者にとって、美術館の薄暗い照明のもと小さい文字の解説を読むのは大変だ、と非常に喜んでいた。現在、有料の音声ガイドや、スマホアプリを導入している美術館もあるけれども、より多くの人が楽しめる美術館が増えてほしい。

www.mazak-art.com